アントルコートってどこの部位?世界の牛肉部位呼び方まとめ

海外で肉のパーツがどう呼ばれているのか?サーロインってどこ?豆知識

フランスでステーキの定番と言えばコートドブッフ(Côte de bœuf:骨付き肩ロース)ですが、アントルコート(Entrecôte:リブアイ)はその端にあります。アメリカでいうならリブロースとサーロインのちょうど間ですね。

下の図を見るとわかるように、肩のあたりからPalelon・Cote・Entrecoteという順で並んでいます。

肉質はおしりへ行くほど繊維が細かくあっさりしています。さらにおしりの方のフィレは赤身で繊維が細く、ローストビーフなどにも使われる場所としてご存知かもしれません。

牛の部位コートドブッフリブロースプライムリブアントルコートの場所

こちら、格之進さんの表に従って言うとコートドブッフが肩ロース・アントルコートがリブロースかな。

牛の部位リブロースプライムリブアントルコートの場所
https://kakunosh.in

オングレ・ド・ブッフってなんて部位?

僕が大好きなのは血の味が強くって、噛み応えがあるオングレ(Onglet de bœuf)です。日本ではなんて呼ぶのかご存知ですか?

オングレドブッフ、ル・ソリレスにて
オングレのグリルとボキューズさんも好んだジャガイモgrenailles
ル・ソリレスにて

下の写真の左側のお肉、ここは横隔膜の一部で日本ではサガリと呼ばれます。横隔膜は臓器としても扱われるので格之進さんの表には載ってません。たとえばこちら、福井デザインさんのホルモン一覧に載ってます。

サガリハラミってどこの部位?牛肉の部位
https://fkdo.jimdofree.com/

春には仔牛が出回るのでOnglet de Veau(オングレ・ド・ヴォー)もおすすめです。少し柔らかくて血の味も薄いのでフィレ肉とか好きな人は好みかも。お店ではオングレを使うことが多かったけど、ときどきその横のバヴェット(Bavette/ハラミ)を使うこともありました。

同じ横隔膜でも呼び名が変わるのは、それぞれを別のものとして捉えているからですよね。食べ方や扱い方が違う、別の価値があるという認識があるのでしょう。

今日は世界の国々が牛肉の部位をどれくらい細かく扱っているのかわかる、牛肉部位別チャートをご紹介します。

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世界の食肉生産高2020年(牛肉生産高予測)

少し牛肉に関するお勉強からどうぞ。上の表は2020年の世界の食肉の生産高と輸出高予測、単位は100万トンです。

一番生産高が大きいのはアメリカ、輸出では断トツ一位がブラジルです。インドでは牛は神聖な生き物として捉えられていると記憶していたのですが、世界第二位の人口(中国14.3億に対して13.5億)の人口なので、人口当たりの消費量で考えるとかなり少ない量です。

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国別:牛肉の部位ごと呼称

今日は、フランス・スペイン・アメリカ・オーストラリア・ブラジル・アルゼンチン・中国・韓国・日本 全9か国のチャートを用意しました。

フランス:牛肉の部位は28-35分類

牛肉の呼び方フランス語訳日本語訳
© https://www.fermederouesnel.fr/

肉の分類は28-35種類に及びます。上の表は立体的に切り身が並んでいてわかりやすいですね。フランスの肉屋さんに行くとき持っていくと便利かも(笑)

さすがに骨以外はすべて食べると言われるフランスの肉食文化はすごいですね。

商店街の肉屋でも肉の種類に驚きますし、
生の腎臓や仔牛の胸腺など、日本では手に入らないものも並んでいます。

オングレは下の表では19番に当たります。

牛肉の呼び方フランス語訳日本語訳
© foodette.fr

ステーキのお店に行くと骨髄のオーブン焼きも食べられます。
ゼラチン質たっぷりでうちの奥さまのお気に入り。

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スペイン:牛肉の部位は26分類

牛肉の呼び方スペイン語訳日本語訳
© gastronomiaycia

食の国スペイン!牛肉の分類は26種類でしょうか。ハラミのあたりの分類があまり多くないように見えますね。スペインのレシピを見てオングレに当たる部位を探すとEntrama。この表には載っていません。肉屋でなければ買えず、事前にお願いしないと手に入らないこともあるようです。

スペインと言えばサンセバスチャンから電車で30分ほどのCasa Julianのお肉が最高でした!

アメリカ:牛肉の部位は44分類

牛肉の呼び方アメリカ英語訳日本語訳
© AmericanAngusAssociation

こちらはアンガスビーフ協会の図表です。44の部位!それぞれに食べ方も書かれていて素晴らしいです。アメリカにはバーベキューしか調理の方法がないと思っててすみません。

牛肉の呼び方アメリカ英語訳日本語訳
©CATTLEMEN’S BEEF BOARD AND NATIONAL CATTLEMEN’S BEEF ASSOCIATION

この表がGoogleの上位に出てくることも素晴らしいです。ちゃんと外向けにサイトを作り込んでいるって感じでしょうか。日本の役所や公団系はデータがPDFだったりするので見習ってほしい…

ハラミ全体を含んだ呼び名がSkirt Steak、オングレ(サガリ)単体の場合はHanging Tenderですね。日本のサガリは横隔膜にぶら下がって肺を支えていることに由来するので似てますね!

オーストラリア:牛肉の部位は17-35分類

牛肉の呼び方オーストラリア英語訳日本語訳
©AIHG

日本に入ってくる外国産牛の半分近くを占める畜産王国オーストラリア(2016年はオーストラリアが48%アメリカが42%)。さすがに見やすいです。

部位数は35でしょうか。下の表は肉がどのようにつながっているかわかるので勉強になります。ブッチャーがこの枝肉をばらしていくのと合わせてみると楽しそうです。

牛肉の呼び方オーストラリア英語訳日本語訳
© wholesalemeats

ちなみにオングレはこの表にはありませんが、コードでいうと2180、シック スカートまたはハンギング テンダーと呼ばれます。

ブラジル:牛肉の部位は24-27分類

牛肉の呼び方ブラジルポルトガル語訳日本語訳
©O mapa do boi: os cortes de carne mais comuns no Brasil

世界第二の食肉大国。表参道のバルバッコアには行ったことありませんがたいそう素敵な若者が肉を切ってくれると聞きました(笑)

牛肉の呼び方ブラジルポルトガル語訳日本語訳
©CORTES DE CARNE BOVINA

サガリに当たるのは、VacioまたはVazioです。

分類の数は24-27。牛の顔がどちらも和やかなのがブラジルっぽいですね。

アルゼンチン:牛肉の部位は28分類

牛肉の呼び方アルゼンチンポルトガル語訳日本語訳
©icpva

世界トップクラスの牛肉生産量と消費量を誇るアルゼンチン。パリにもアルゼンチン料理店はいくつもあって看板メニューはアルゼンチン牛です。さて、そんなアルゼンチンは牛肉の分類は28種類。オングレは21のVacioです。

ブラジルをはじめポルトガル語圏は似た名前ですね。Vacioを直訳すると空虚(笑)空洞とか真空を意味するVacuumと同じ語源みたいです。

中国:牛肉の部位は18分類

牛肉の呼び方中国英語訳
©图解牛肉各个部位分布图及质地简介

さすがに巨大な国、生産量世界3位の中国は消費量では世界2位です。肉の区分はそれほど多くない18程度。ピンクの表ではサガリは11番の細腹肋肉が一番近いでしょうか。この部位は英語でいうinside skirt、ハラミの部分です。

牛肉の呼び方中国英語訳
© 做牛排用什么部位的牛肉?国产牛肉为什么不能做牛排

言語もいくつかに分かれているこの国は、食肉に関しても、地方によって呼び名が違ったり、外国の人はお肉を買うのも一苦労だそう。上の2表ではサガリに当たる部分がなくて11番の牛腩/Flankに含まれています。

牛肉の呼び方中国英語訳
© 知乎

韓国:牛肉の部位は20-24分類

牛肉の呼び方韓国語英語訳
© 소고기 부위별 명칭과 조리법

韓国へ行くと精肉店はもとより、デパートなどの肉コーナーでも品ぞろえに驚かされます。うちの奥さまも日本でテールが買えないと嘆いていたっけ。

牛肉の呼び方韓国語英語訳
© sanoee.co.kr

分類は20-24種類。上の表では脚の分類が3種類に分かれています。煮込み・スープなどで使い分けるのでしょうか。おもしろいですね。

サガリは 안창살/アンチャンサル。一番目の表だと7の一番右Hanging Tenderのところですね。黄色い表では中心部分に斜めに入った안창のあたり。最後の表では18番です。

牛肉の呼び方韓国語英語訳
© 소고기 부위별 명칭과 조리법


スライスの写真は焼肉する気満々という感じが伝わっていいですね(笑)

日本:牛肉の部位は9(22)-33分類

牛肉の呼び方日本
© 日本食肉消費総合センター


日本は農林水産省によって決められた食肉部位の呼称があり、9つに分けられています。そのため9種類のみの表(それにネックと牛スネ、内臓12部位での分類)が多く焼肉屋さんのページに行かないと細かい分類がされていません。

どこまで細かく分類するかは個人店の裁量という部分も多いでしょう。

牛肉の呼び方日本
焼肉もとやま

上に引用した焼き肉店もとやま・下図の精肉店「ミートキムラ」ではサガリとは言わずハラミにまとめています。

牛肉の呼び方日本
©ミートキムラ

まとめ

肉の分類の仕方にはその国の食文化が現れるように思います。どこまで細分化するかはどこまでその差を明らかな知識とするか、ということでしょう。

そしてまた、名付けられてさえいない部分は名をつける価値もない、というと言いすぎですが一般の人は知ることのない部位なのだと言えます。

むかし、イタリアに行った弟から「お皿に残ったソースをぬぐう行為をスカルペッタと呼ぶ」と聞いて驚きました。そして食生活が豊かな国だなと思ったものです。言葉は変わりゆくものだけれど、語彙の数が減らず、豊かな文化が積み上げられるといいですね。