【ジレ・ジョーヌ】マクロン大統領のスピーチを見てからフランスの統計を分析してみる

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12月10日夜8時、ジレ・ジョーヌのデモへの対応として

マクロン大統領が声明を発表しました。

マクロン大統領が語る提案

マクロン大統領は主に3つの提案をしました。

順に追っていきましょう。

2019年1月から最低賃金を100ユーロ引き上げる

被雇用者への給与を現在の最低1498,47ユーロ(手取り1148,96ユーロ)から

100ユーロ引き上げて約1600ユーロ(約20万円)に。

雇用主負担ではないとも話しているので、国庫から雇用主へ支給がされるのでしょうか。

ちなみに、この施策に当てはまる人は被雇用者の6%ほどにあたります(2015年のデータより)。

月収2千ユーロ以下の退職者に対しては増税を取りやめ

税収を上げるための一策として予定されていた

月収2000ユーロ以下の年金生活者に対する社会保障税の引き上げが免除に。

これも同様、代わりの財源は発表されていません。

こちらは2018年1月から開始していたもの。

残業勤務を非課税に

残業代から引かれる税金を非課税にして

雇用者の所得増を目指します。

また、2018年末の賞与も課税しないので各雇用主が支払うのを期待するとのことです。

 

これに対してジレ・ジョーヌはどう反応したか…

ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)の反応


残念ながら、こちらの写真がマクロン大統領へのメッセージ。

引き続き、デモが行われそうな雰囲気です。

 

このメッセージのリプライ欄も荒れています。

「もう、マクロンはやめるだけ!」

「中途半端、本当に大事なところを無視している」

本当に大事なところとは

年金生活・無職の人を除く成人が得ている収入が全体に占める割合について

上位10%の層、中上位40%、下位50%を比べると、

下位50%の所得割合は伸びているようにも見られます。

さて、次に世帯別の税引き後所得の分布を見てみましょう。

INSEE(フランス国立統計経済研究所:インセ)が2014年に行った調査です。

先ほどの給与分布のグラフと比べての違和感がありませんか?

1150ユーロ以下の給与の人は6%、

それに対して貧しい世帯(月収1000ユーロ以下)の割合は14%です。

ジレ・ジョーヌがコメントしていた「一番大切な部分」とは彼らのことでしょう。

 

非正規雇用、もしくは雇用がない世帯。

月給がもらえる契約で働けないので、今回の給与アップとは関係ない世帯です。

 

今回のデモの発端の一つ、燃料税の引き上げに声を上げたのは

トラックドライバーの青年でした。

彼らの抱えるそもそもの問題は、雇用がないこと。

そして、個人事業主に対しての保証はありません。

雇用がない人・自転車操業で苦しい個人店などに対して、

最低賃金を上げると言っても別世界の話です。

 

フランスにも物流のニーズはあるのに、彼らに仕事がないのは

EU加盟諸国の低賃金のドライバーの流入が大きな理由。

東欧諸国から入ってくるドライバーなどはフランスの最低賃金も関係ないので単価が安いのです。

 

そのような理由もあり、ジレ・ジョーヌの人たちは

フランスもEUから出るFrexitも提案しています。

(提案が25個出ているので、どれが優先かわかりづらいですね…)

フランスの所得格差

今回のジレ・ジョーヌに関しては常に断絶という言葉が用いられます。

それほど所得が割れているかと言えば、上位1%の保有する財産の割合でみると

下記5か国の中では一番低いです。

 

お金持ちばかりが得をしている、というよりも

最も貧しい層、国外から入ってきてフランス語も得意でない層、

そして大学に行けず、定職を見つけづらい層を救えないと、このような連鎖は終わりません。

では、移民問題の解決が必要?

とはいうものの、フランスの学校も移民の人たちへの教育を怠っているわけではありません。

非フランス語話者の子供が転校してきたら、その親に対して無償のフランス語講座を用意したり

子どもたち、親が社会から孤立しないように手立てを講じています。

 

今回のデモに関して日本の報道でよく見かけた「移民問題」について

ジレ・ジョーヌはほとんど触れていません。

 

報道が、移民政策について考えるべきだ、ということがあっても

これは移民が悪い、ということはなく

「われわれが抱える移民政策を改善する必要がある」という言い方。

このデモを通して感じていること

デモを通して自分が感じるのは、「憎しみ」「凶暴性」「暴力」・・・

これは社会が分断されていて、自分たちの存在が認められていないということへの憎しみ。

自分が期待するほど、社会に求められないという失望。

 

もちろん、現政府の政治を発端として始まったのかもしれませんが

この分断への怒り、そして悲しみは

大統領を含むすべての人がやさしく、人の立場に寄り添い考えることが大切です。

鍵は幼児教育にあるのでは?

この対話で求められる忍耐力、自信、協調性などの社会的・情動的性質は

就学前教育に大きく左右されると言われています。

 

ノーベル経済学賞も受賞したアメリカの教育経済学者ジェームズ・J・ヘックマン博士が

サイエンス誌で発表したデータがあります。

データは、1962年から67年の間に行われたペリー就学前プロジェクトに関するもの。

このプロジェクトでは恵まれない家庭環境の子供に対して、

毎日教室で2時間半の授業と、週に一度90分の家庭訪問を行いました。

そして、40歳になるまでの生活状態の調査を行っています。

 

その結果は驚くべきものでした。

なんと、教育費に対する投資回収率は6から10%。

幼児期に身につけた非認知能力(忍耐性や協調性、精神的・肉体的健康さ)を生かして

多くの人たちが社会的成功(持ち家・高収入・安定)を得ていたのです。

 

このような利回りで投資できるなら、歳入歳出比もマイナス2%から

プラスに転じさせることもできると思います。


source: tradingeconomics.com

おわりに

おそらく、今週末の15日もパリは落ち着かないでしょう。

早く、ジレ・ジョーヌを取り仕切る人が登場して

この騒動のための話し合いをしてくれることを望みます。

 

話ができる相手との対話しか、あなた方の叶えたいことはかなわない。

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