11月24日の日曜日、シャンゼリゼでストライキが暴徒化して
パン屋のPAULのテントが燃やされる事件がありました。
サッカーのワールドカップの時もすごかったけど
フランスの民衆ってそんな破壊行為するのかな…と疑問です。
ふと見たTwitterのタイムラインに、
フランスに詳しい堀先生のジレ・ジョーヌに関するツイートが流れてきました。
ジレ・ジョーヌが活動する背景
ガソリン価格が高騰して、という報道もあるようですが、
原因はガソリン代だけではなく、多岐にわたります。
ガソリン価格の段階的引き上げ
この1年間で、ディーゼル燃料の価格は+ 23%、ガソリンは+ 15%上がっています。
この価格上昇は、収入によって影響に格差があり、最も収入が多い上位10%の世帯と
最も少ない10%の世帯を比べると、その影響は2.7倍の差があると報じられています。
これまでもディーゼル車に乗る運輸業の人々を中心に苦情は出ていましたが
このストライキはさらなる引き上げ決定をきっかけとしているようです。
2019年1月1日から、
ディーゼル燃料は1リットル当たり7セント、ガソリンは4セント多く課税される予定です。
現在のガソリン・ディーゼル燃料ともに1.5ユーロほどなので、3~5%ほどですね。
しかも、2040年までのディーゼル・ガソリン車販売中止を目指しているので
今後も段階的に引き上げていく予定です。
マクロン大統領の税政策
マクロン大統領の税政策も問題として取り上げられています。
その内容は富裕層に有利な改正だ、と批判されています。
富裕税
フランスには富裕税というものが存在します。
毎年1月1日時点で130万ユーロ(約1億7160万円)以上の資産を持つ世帯に対して課せられる税金。
2018年からはその課税対象資産が不動産に限定され、金融資産などは対象外になりました。
出国税の廃止検討
フランスでも、起業家が国外に移り、租税を回避するという事象は発生しています。
それを予防するために設けられたのが出国税です。
マクロン大統領は、今年五月に、起業家が資産を国外に移転させる場合に支払う
30%の国外転出時課税を撤廃する計画を明らかにしています。
労働法の改正
2017年には労働法を改正。解雇時の罰金に上限を設け、
企業が労働者を解雇しやすくすることで雇用拡大の動機づけにしようとしたことも
かえって失業者を増やしているのでは、と非難されています。
フランスの分断
フランスの消費調査局Crédocによれば、フランス全土の30%が
フランス国家に見捨てられていると感じています。
実際、1920年と比べて電車によってカバーされるエリアは格段に減っており、
ここ数十年、フランスの政策は大きな都市に集中してきたと専門家は言います。
この傾向は都市圏外の地域ではより強く出ており、そのエリアに住む人の半数以上が
経済的および社会的理由により、ほかの地域への移動も不可能であると回答しています。
ジレ・ジョーヌの展開
ジレ・ジョーヌの活動は全国で展開されています。
この展開方法が非常に現代的な方法で、興味深いものがあります。
Facebookグループを活用した同時多発性
現在、ジレ・ジョーヌのストライキは、全国どこでも、
誰でも主催することができます。
このページから、自分の住んでいるエリアを検索すると、
今後のストライキの予定地点が表示されます。
ストライキの主催も自主参加
開催予定がなければ、同ページにデモを主催する、という項目があるので
そこから場所・時間などを指定し、主催者がそれを承認すると
ストライキの予定としてGoogleマップに表示されるシステムです。
ただ、ジレ・ジョーヌは道をふさぐことだけを目標としており、
一切の破壊行為については、奨励していません。
実際、先日のシャンゼリゼでの暴動の後には
ジレ・ジョーヌの人たちがゴミを片付ける映像もアップロードされています。
Les #GiletsJaunes ramassent ce que les casseurs ont fait aux #ChampsElysees le #24Novembre pic.twitter.com/uZhpAKb2a4
— En Cause (@EnCausee) 2018年11月24日
また、地方のデモではこのような暴動は少なく、非常に和やかな雰囲気が伝えられています。
暴力ではなく、連帯がこの活動の本質です。
南仏のスペイン国境に近いポー市。「ジレ・ジョーヌ」デモ隊と対峙する治安部隊が黙ってヘルメットを脱ぐ。デモ隊の人々が拍手し、国歌ラ・マルセイエーズを歌う。時折この種の場面がネットにアップされる。デモ隊は殆ど必ず「メルシー!」と治安部隊に声をかける。両者とも社会的には同じ階層なのだ。 https://t.co/D1chyX9h0T
— 堀 茂樹 (@hori_shigeki) 2018年12月2日
変わらない日常
パリは燃えているか、などのツイートも見かけましたが
現在のパリはいつも通りです。
月曜の午後、シャンゼリゼ通りへ行ってみましたが
放火された跡や、割れた窓ガラスが散見されるものの
いつものようにクリスマスのイルミネーションが輝いています。
外国からの観光客や、カップルたちが歩き、
ルイヴィトンのクリスマスツリーの前で写真を撮ったり
何も変わらない風景でした。
おわりに
こうして暮していて感じるのは、同じように連続しているつもりの毎日が
実は分断されているんだなということ、
そして、ある一瞬でその日常が失われるということもあること。
日本から見たフランスのニュースと、フランスで伝わるものも違いますし
フランスの中でもどの場所にいるのか、どんな暮らしをしているかで意見は大きく変わります。
僕もフランスで暮らす間に、もう少し街に出て、酔っ払い、友達を増やしたいなと思います。
生活の中にしか、その国を感じる場所はありませんから。
11/29にハフィントンポストのTVに出演して気づいたことをこちらにまとめました。
フランス社会の大きな分断が、この暴動の根っこにあるようです。
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