2021年のミシュラン、フランス版も発表になりました。
この記事ではフランス全土、パリ以外をまとめています。
パリの日本人シェフについてはこちらの記事をどうぞ。
- 2021年ミシュラン・主なニュース
- フランス全土の日本人シェフ二つ星レストラン3店舗
- フランス全土の日本人シェフ1つ星レストラン8店舗
- Dijon L’Aspérule ラスペリュール 木村圭吾シェフ
- Valence La Cachette ラ・カシェット 伊地知雅シェフ
- Cancale La Table de Breizh Cafe ラ・ターブル・ブレイズ・カフェ 久高章郎さん
- Saint-Valentin Au 14 Février オウ・キャトーズ・フェブリエ 根上いくシェフ
- Lyon Au 14 Février オウ・キャトーズ・フェブリエ 新居剛シェフ
- Lyon La Sommelière ラ・ソムリエール 菊池たかふみシェフ
- Fontainebleau L’Axel: ラクセル 後藤邦之シェフ
- Marly-le-Roi Le Village ル・ヴィラージュ 宇井土智廣シェフ
2021年ミシュラン・主なニュース
2020年に三ツ星だった29軒は三ツ星を維持。54店舗が初めての星を獲得しました、2020年よりも5店舗多いですね。また、去年の掲載店のうち12店舗が閉業により星を失うなど、厳しい状況です。下記、6つほどのトピックがあったので気になったものだけどうぞ。
通常であれば一年を通して調査をするのですが、今年は5から10月のみの調査だったので、通常の倍の人数の調査員が派遣されたとのこと。人手が足りなかったのでアジアなどからも調査員が出張したそう。また、ミシュランとしてもテイクアウト可能なお店を告知するなど、レストランを応援する姿勢を見せています。
日本でも多くのお店が閉店しましたが、フランスのミシュラン星付きレストランの状況も思わしくなく、2021年に入ってからもサイドロックダウンの予定など予断を許さない状況です。
二つ星から一つ星への降格
L’Atelier de Joël Robuchon – Saint-Germain パリ7区
L’Atelier de Joël Robuchon – Étoile à Paris パリ8区
二つ星から星なき店へ
Le Grand Véfour パリ1区(理由:コンセプトの変更)
Sylvestre パリ7区(閉店)
L’Abeille パリ16区(閉店)
L’Astrance パリ16区(改装後、2021年営業再開予定)
一つ星から星なき店へ
Les Jardins de L’Espadon パリ1区(閉店)
La Poule au Pot パリ1区(降格)
Penati al Baretto パリ8区(降格)
Le Châteaubriand パリ11区(降格)
Cobéa パリ14区(閉店)
Antoine パリ16区(閉店)
フランスでは高校から料理の道に入り、18歳から働き始める、もしくはさらに上級の学校で料理を極めてから一流レストランに勤める、というのが王道ですがアレクザンドラ・マッツィアシェフはなんと、フランスのU‐21代表も務めた元プロバスケットボール選手です。
料理の世界に入ってからはピエール・エルメとともにフォションで働き、ミシェル・ブラやアラン・パッサールのもとで修行をして2010年、34歳のときにマルセイユで1店舗目を出店。2014年に現在のお店「AM par Alexandre Mazzia」をオープンし翌年一つ星、2019年に二つ星、そして2021年に三ツ星の獲得を成し遂げました。
火~土 12:00-14:00 20:00-21:30 日月休み
04 91 24 83 63
9 Rue François Rocca, 13008 Marseille / Googlマップ
MarseillesM2号線 Rond Point du Prado駅 徒歩5分
マリと日本料理にインスピレーションを発するMoSukeのMory Sackoシェフが一つ星と若手シェフ賞を受賞しました。Moryシェフはティエリー・マルクス氏のもとRoyal MonceauとMandarin Orientalで修行をして2020年にオープンしたばかり。オープン翌月にロックダウンになりましたが、すぐに「MoSugo」という名前でテイクアウトを始めました。
お店の名前「MoSuke」は、織田信長の従者だったYasukeという歴史上ただ一人のアフリカ系侍の名前に由来します。アフリカと日本のエッセンスを加えたフランス料理、楽しみですね。🇦🇷など、南米料理が流行ったあとにはいよいよ、アフリカ料理の時代が来るのでしょうか。
月木金土日 12:00-14:00 18:00-20:00 火水休み
01 43 20 21 39
11 Rue Raymond Losserand, 75014 パリ14区 / Googlマップ
13番線 Gaîté 駅 徒歩3分
ONAはボルドー近郊のアレスという南西部の小さな村に2016年にオープンしました。1900年にミシュランガイドが立ち上がって以来初のヴィーガン料理でミシュラン掲載という事だけでなく、他の部分でも2020年代を感じさせるレストランです。
Claire Vallée(クレール・ヴァレー)シェフは元考古学者、ちょっと異色の経歴です。お店の開店資金はクラウドファンディングを活用し、資金の一部が不足したときにはSNSで募集した80人の協力で2か月かけて完成させています。お昼は24€とお手ごろですし(夜は78€)、ボルドーへ行った際などはぜひ寄ってみたいですね。
水木金 12:00–13:30/20:00–21:00 土 12:00–13:00/20:00–21:00 日 12:00–13:00 月火休み
05 56 82 04 06
3bis Rue Sophie et Paul Wallerstein, 33740 Arès / Googlマップ
ボルドー空港から車で40分
ミシュランが選ぶベストパティシエ賞、今年は11人のパティシエが選ばれました。パリでは4店舗。そのうち1店舗が杉山あゆみさんのAccents table brouse、そして大宮シェフのl’Allianceも入っています。レストランにおいても日本のクオリティはフランスを凌いでいると言われますが、パティスリーも同様です。むしろ、細かくて正確な作業が多く求められるパティシエには日本人の性質が非常によくマッチするのではないでしょうか。
以下がパリの4パティシエです。
・La Scène de Stéphanie Le Quellec / Pierre Chiracさん
・l’Alliance / Morgane Raimbaud
・l’Oiseau Blanc au Péninsula / Anne Coruble
・Accents table bourse / Ayumi Sugiyama
2021年は変わらず、フランス全土で星39個です!
(パリ3つ星1軒+2つ星1軒+1つ星20軒・地方2つ星3軒+1つ星8軒)
日本人シェフリストの使い方・レストランの探し方
さて、日本人シェフレストランの一覧ですが、目次からご参照されるとスムーズです。
ミシュランから借りた料理の写真・1人当たりの値段の目安も載せているので参考にどうぞ。シェフのインタビュー記事リンクも書いているので、そちらを読まれても面白いと思います。
こちらの地図もご活用ください。
(二つ星のいいマークがなかったので、風船が二つ並んでいるのが二つ星のマークです)
営業時間に関して
フランスの営業時間は最終入店時間を示すことが多いです。営業時間が短く表示されていて驚くかもしれません。
星つきのレストランは基本的にコース料理なので、2~3時間ほどのコースを楽しむことを考えると、昼の営業時間が1時間と書いてあっても日本の営業時間で考えると3時間ほどの営業をしていることになります。
予約に関して
日本人のオーナーシェフでも、電話に出るのが日本人とは限りません。星付きレストランのサービスには必ず英語を話せる人がいるので、英語・フランス語ができる人は電話予約も可能です。英語が話せない場合は、仕込みや営業中のシェフ・料理人を電話口に呼び出すことになるので、メールやネット経由の予約がおすすめです。
たいていのお店は英語対応の予約サービスがありますし、お店によっては日本語での予約サービス(手数料/一件500円程度)に対応していることもあります。
フランス全土の日本人シェフ二つ星レストラン3店舗
今年はランスのラシーヌ田中シェフ、ボジョレーのサンタムール村のAu 14 Février(浜野雅文シェフ)、そしてリヨンのTakao Takano(鷹野孝雄シェフ)も星を維持されています。
Saint-Amour-Bellevue Au 14 Février オウ・キャトーズ・フェブリエ 浜野雅文シェフ
後悔するのは選んだ道で失敗するからです。選んだ道を失敗しないためには死ぬほど努力するしかありません。または、失敗しても続けるしかないです。あっちをやればよかったと思うのはこっちの努力が足りないのだと思っています。
「パリで食べられるものをここでやる必要はない」という思いに至りました。
独自性が大事です。パリのレストランで提供されているような料理をあえて目指す必要はないと思っています。この地にいると雑念が入らないのでいいです。お客様からは、「美味しかった」と言われるよりは、「楽しかった」と言われたいです。「いい時間を過ごしたよ」と言ってもらえるように日々努力しています。
浜野雅文シェフ Foodionにて
2013年にオープンして、2018年に二つ星を獲得したレストラン。
実は、2月14日というロマンチックな名前のレストランは、フランス全土に4店舗、そして聖バレンタイン村に本店を持つ日本人料理人のグループです。
(リヨンの2店舗目は2019年に一つ星を獲得したLa Sommelière)
海外で5つの星を獲得している日本人グループは彼らだけではないでしょうか…すごいです。その中でも最高の二つ星を持つお店がボジョレーのSaint-Amour-Bellevue村の浜野シェフ。
直訳すると「聖なる愛・美しい景色」という名前がまたロマンチック。
コースの値段は65 € と 120 €です。
お会計は昼夜問わず、100€から、という感じでしょうか。
浜野シェフのインタビュー全文はFoodionのインタビューでどうぞ
Lyon Takao Takano タカオタカノ 鷹野孝雄シェフ
「働かせてほしい」という言葉は、タカ氏が当時、唯一、覚えたフランス語だったという。「最初は理解できないことだらけで、いつも観察してばかりいました」
「完璧主義者」と自認するタカ氏の弱点は、いまだにレストランで注文ができないことだという。
AFP通信 2011/1
2018年から二つ星なので3年目ですね。2011年に一つ星、一度失って2013年に再度獲得してからの2つ星が素敵です。
コースの価格は40 € から 120 €。お会計は、お昼で65 €、夜だと180 €くらいでしょうか。
インタビューはafp通信の記事から引用しています。
Reims Racine ラシーヌ 田中一行シェフ
同じような料理じゃなくて、すべてにおいてほかのレストランにおいて出来ないことをやりたい。
全ての食材が僕の頭の中ではソースなんですよね。
一番大事なのはお客さんと同じ目線で料理ができる、料理で会話できることだと思います。
Youtube Miele Japan 2016/8
2017年に1つ星を獲って2020年に2つ星はとても速い昇格です。シャンパーニュで有名なランスのレストラン。
コースの値段は 45 € から 100 €です。お会計はお昼が70 €、夜が150€から、という感じでしょうか。ダイナースクラブのイベント時のインタビューが上がってます。
フランス全土の日本人シェフ1つ星レストラン8店舗
木村圭吾シェフのラスペリュールはオーセール時代に行きました。素直においしいし、本当に素敵な人柄だったので、移転後の星獲得もうれしいです。
もともとのお店も、オーセールの人たちに愛されているので、そこを残したうえで、もう一店舗に踏み切ったのも男前ですよね…
オ・キャトルズ・フェブリエ(リヨン)の新居剛シェフは本田直之さんの本でも「デメリットをメリットだと考えられるか」という話をしています。アジア人がフランスの地方で戦うのはデメリットが多そうな気がしますが、それを乗り越えてこそのミシュランですよね。
Dijon L’Aspérule ラスペリュール 木村圭吾シェフ
2014年4月にオープンし、2015年にオーセールで一つ星を獲得したものの、さらに上を目指すために広いお店を探して、ディジョンへ移転した2019年も一つ星を維持。あと2、3年で二つ星を取るかもしれませんね。「二つ星を獲るために移転する」とパリの厨房にいらしたときに話してました。
コースの値段は35 € から 105 €です。お会計はお昼が55 €、夜が130€から、という感じでしょうか。
木村シェフのインタビューはOvniがおすすめ。今の物件を探している時期のインタビューです。
レストランへ行くのが好きで自分でも行きますが、お客さんの立場になって考えた時に料理人の哲学なんてものは必要ないと思います。僕は家族で楽しく、美味しいものを食べて、機嫌よく帰りたいだけです。そこに料理人の「俺は」というものは必要ないと思っています。
僕にとっての料理はほぼ全て、人生の全てですね。これしかやってこなかったですし、これしか考えてこなかった。
僕の料理には大義とかメッセージはないと言いたかったんです。そんな大それたことは考えていません。ただ自分が好きで楽しんでやっていることで、お客さんが喜んでくれれば僕は幸せだと。
Ovniより 2016/3
Valence La Cachette ラ・カシェット 伊地知雅シェフ
2005年にオープン、2009年に星を獲得されているので、現在13年目。現在フランスの地方で最も長く星を持っている方です。
コースの値段は30 € から 65 € です。お会計はお昼が50 €、夜が100€から、という感じでしょうか。
伊地知シェフもOvniのインタビューがおすすめです。二軒目としてやっていたビストロを閉めた時期のインタビュー。
どんなに小さくても今ある空間の中で最高のサービスができるように高めていったほうがいい。まさにそうだと思うし、自分も今の店でそれができればいいと思っています。
私は料理をしていてやっぱり楽しいと思うし、食べても楽しいと思っています。自分という人間の中での大きな楽しみです。その自分にとって大切なものを子供達にも伝えていきたい。
Ovniより 2016/07
Cancale La Table de Breizh Cafe ラ・ターブル・ブレイズ・カフェ 久高章郎さん
2013年に星を獲ったので、もう9年目の1つ星。珍しく、フランス食材を使った和食店が地方で受賞するという快挙です。日本国内にもブルターニュ地方のクレープ店として進出しているグループですね。
コースの値段は38 € から 75 €です。お会計はお昼が60 €、夜が100 €から、という感じでしょうか。
久高シェフの日本語インタビューが見つからなかったのでフランス語の動画をどうぞ。
また、星獲得の際には在日フランス大使館からのリリースも出ています。
フランスの食材を使って、日本の料理を作っているので新しいレシピを作って
それをおまかせコースなどで出していくことは喜びであり、幸せです。
オープンキッチンだから、お客さんの好みも見られる。
ちょっと少なめに、とかいろいろね。
AFP通信 2013年 拙訳
Saint-Valentin Au 14 Février オウ・キャトーズ・フェブリエ 根上いくシェフ
こちらがAu 14 Févrierグループの最初のお店。2005年にオープンして、2011年からミシュランの一つ星です。地方の人口280人の村に日本人が一つ星を運んで来たってすごいですよね。
そんな栄誉あるレストランは村長さんのご自宅で忘年会をされてそうです。
コースの値段は65 € と 92 €です。お会計は昼夜問わず100€から、という感じでしょうか。
シェフが2020年より根上シェフに変わりました、90年生まれの30歳!今後が楽しみですね。まだインタビューなどは見つからないので、南仏のレストランへ行ったときのブログから抜粋。
今私は料理長として駆け出したばかりですが、森支配人と共に、
ヴァレンタイン村をChristopher Coutanceau のように
星付きレストランのある村としてアピールできたらと思いました。
まずは諸先輩方に認めていただけるよう
今回の食事で学んだ事を自身の仕事に落とし込めて行きたいと思います。
お店のブログより
Lyon Au 14 Février オウ・キャトーズ・フェブリエ 新居剛シェフ
新井シェフはサンヴァランタン村のAu 14 Février時代にも星を獲得してるので、すでに2つの星を獲得した経験をお持ちです。
コースの値段は 92 €。お会計は昼夜とも130€から、という感じでしょうか。
新井シェフのインタビューはエスコフィエ協会の会報(PDF)がおすすめです。
経営的にも、お客様に応える意味でも、もう少し規模を広げることが望ましいのですが、お得意様に喜んでいただくことが何より大切ですし、現在のスタイルを守ってリヨンで店を守っていきたいと考えています。
進む道を迷った時、本当に頼れるのは自分だけであり、人は自身の努力と経験の上に初めて己を表現することができるのだと気付かされました。
エスコフィエ協会 会報より 2013/1
Lyon La Sommelière ラ・ソムリエール 菊池たかふみシェフ
2019年に「Au 14 Février」グループで獲った三つ目の星。星を獲るだけの料理・サービスの能力もさることながら、こうして異国で多くの人を雇っていることもすごいですよね。
コースの値段は72 €です。お会計は昼夜ともに120€から、という感じでしょうか。
日本語のインタビューが見つからなかったので、LeMonde誌の記事をどうぞ。
最大12人のお店で、菊地シェフの和のニュアンスに重なる驚くような香りの料理、
そして長谷川ソムリエールによるワインの組み合わせも素晴らしい。
Le Monde誌 2018/04 ※かなり意訳
Fontainebleau L’Axel: ラクセル 後藤邦之シェフ
パリから電車で40分ほどのフォンテーヌブローにある後藤シェフのお店は2013年から一つ星。パリに住んでいた王族が狩りに来ていた森がひろがる素敵なエリアです。
コースの値段は33 € から 101 €です。お会計はお昼が50 €夜だと160€から、という感じでしょうか。
後藤シェフはCHEF AGENCYのインタビューがおすすめ。
人生を進んで行く上で大切にしていること。それは、「人生はタイミングだ」ということです。どんなに努力をしても、タイミングをつかめなければ前へ進めません。
「渡仏する」「有名店に移る」「空き物件が出る」。そのタイミングが訪れた時に、つかんで諦めないことです。
ただ、何かをつかみたければ同時に、何かを手放すこと。私自身、日本を手放したから、手に入れられた経験や場所があると確信しています。
そして、妻のヴァネッサも同様です。2人で店を作るにあたり、彼女は料理人だったにもかかわらず、その立場を手放して、表に立つことを選んでくれました。『L’Axel』は2人でつかんだ場所です。
CHEF AGENCY 2017/4
Marly-le-Roi Le Village ル・ヴィラージュ 宇井土智廣シェフ
2001年にオープン、2011年から一つ星を維持しているので11年目です。
コースの値段は 40 € から 240 € 。お会計はお昼が60 €、夜は80 €から、という感じでしょうか。
宇井土シェフはOvniのインタビューがおすすめです。
たとえどんなに有名になろうとも、お客さん一人一人が支えてくれるから今の自分がいる、と言うことは忘れちゃダメですね。
僕にとっての料理…
切っても切れない、切りたくてもつきまとっているものです。別に切りたいと思ったことはないけれど、ふと気づくと必ず頭の後ろに料理がいるんですよ。夜もハッと起きたりする。ここで一生懸命やります。調理場にいるのが好きなんです。この先どうなるかはわかりませんが、やっぱり自分の手が動くうちは仕事をしていたい。
Ovni 2016/2
パリの日本人シェフについてはこちら