神崎千帆さんのVirtusはMirazurの風が吹いているレストラン|パリ12区

フレンチ

ミシュランってあるじゃないですか。そうそう、三ッ星獲得!とかニュースになるあれです。今年、南仏にあるMirazur(ミラズール)というレストランが三つ星になったんです。

https://www.theworlds50best.com/

日本ではあまり話題になってないかもですが、そこのシェフをしていた神崎千帆さんという方が、パリで一つ星獲ったんです。

*ミラズールの総料理長はMauro Colagreco(マウロ・コラグレコ)シェフ。大きなお店、世界を飛び回るシェフのお店では現場シェフという役割があり、日々のメニュー構成にも現場シェフの役割が大きいです。建築の仕事してるNさんなら安藤忠雄事務所では、スケッチやイメージを描くのが安藤さん、事務所で設計の全体をマネジメントしてる仕事が現場シェフというイメージがわかりやすいかも…神崎さんがシェフしてる頃にMirazurは一つ星から二つ星へ昇格してます。

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まぁ、行くしかないじゃないですか。これが本当に素晴らしかったので、Nさんにもおすすめと思って書いてます。

お店の雰囲気もすごく素敵。去年リノベーションしてて、あの空間の豊かさは二つ星*取りに行ってると思うなぁ…というか、ありえる。ミシュランの二つ星以上は特に空間の豊かさ、トイレと客席が隔てられていること、余裕ある席配置などが求められる(らしい)

春を感じる2月初旬のお昼だったので、太陽の光も豊かでそれはもう最高でした。

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2月9日土曜ヴィルトゥスのデギュスタシオン(おまかせ)コース

昨日は友達が結婚したのでそのお祝いということで、シャンパーニュで乾杯からのスタート。メニューにはアラカルトとかあるけれど、ぼくはデギュスタシオン*(おまかせ)の方が好きかも。

*デギュスタシオンってテイスティング=味見メニューと思っちゃうけど、日本語訳としてはおまかせの方が正しいかも。一皿ずつの量は小さめだけど、全部食べるとかなりお腹いっぱいになる量です。

シェフが一番出したいものを、出したいアレンジで出すのがそのレストラン最高の時間だと思うから。部位によっても調理法変えた方が良かったりするし、厨房任せが一番です。

そしてワインも、ペアリング*があればその方がおすすめ。Virtusのペアリングは量も多くないので合計で2杯分くらいです。

*フランス語だとaccord mets et vinsって書かれることが多いかも。

アミューズ:ビーツとシェーブル・アンチョビと生ハム・牡蠣とマンゴー

まずはロマンチックなお皿から。冬に見つけた暖かい場所、みたいなコンセプトかな。

ビーツを混ぜた紅色のおかきにシェーブル(ヤギ乳)チーズとビーツがのっているスナック
アンチョビがのった生ハムソースのクロケット(コロッケ)
牡蠣にはマンゴービネガーの氷を載せて。

話が盛り上がって氷が解け始めてサービスの人に「はよ食べてね」って言われちゃいました(笑)

次に出てきたパンがめっちゃ美味しくて、パティシエのマルセロさんが焼いてくれた、焼き立てのパータフュイテ(デニッシュ生地)がひとつ目のびっくり。
ナイフで切ってね、と二人で一つなんだけど表面さくさくで中はふんわり、最高。

ソムリエールさんは英語が堪能で、料理とワインの合わせ方の説明も楽しいです!

前菜 ボラのセビーチェとミカンのビネグレット、色とりどりの大根

最初のワインはスペインのポルトガル寄りって言ってました。
ミネラルとフルーティーな感じがお魚に合うよって。ちょっと軽くて、小粒の緑なブドウの味。

前菜の一つめはボラ(mulet noir)のセビーチェ。日本で食べるボラって少し臭いイメージがあるかもしれないけど、フランスだとボラは生食用として定番の魚です。

ボラと、色とりどりの大根、味付けはミカン(clementine)とオリーブオイル・にんにくかな。行ったことないけど、Mirazurっぽいお皿です(笑)。

カラフルで幸せなお皿。南仏の海辺にあるレストランにぴったり。

前菜 パーフェクトエッグに黒トリュフ、トピナンブールとヘーゼルナッツ

そして続くはパーフェクトエッグ*と黒トリュフ。
トピナンブール(菊芋)とへーセルナッツも入って、味が少し土っぽく。

https://www.chezfood.com/

*Oeuf Parfait / Perfect Egg は62~64℃付近で加熱した温泉卵のこと

トリュフのフワッとした感じ、卵黄のコクが、土っぽい感じを経て力強く仕上がってた。
あの味のつなぎ方って、家でトリュフオイル使うときにもまねできるかもしれません。
ごぼうとベーコンのリゾットにトリュフオイルをかけるとか…
近いうちにやってみて美味しかったらメールします。

あわせてくれたのは意外にも10年物のマディラワイン。
ベースがしっかりしたマディラとコクや大地の感じが絡まるって不思議。

このソムリエールさんは白ワインから赤ワイン、みたいな定番を無視してとにかく楽しいマリアージュという球の投げ方がすっごい。ソムリエしている友達もつれてきたいです。

魚料理 アンコウのソテー、ヴァンジョーヌのソースとカリフラワー

魚料理の前に出てきたワインも変化球でした(笑)ジュラ地方のソーヴィニヨン。

魚料理がアンコウなのだけど、ソースがヴァンジョーヌ(癖のある黄色いワイン)のソースなのでそこへの布石。少しソースに香ばしい感じがあったので、バターを軽く色づけてからソースを作ってるかも…一緒にカリフラワーのピュレと大根。

このあたりから結構酔ってて、とにかく楽しい時間でした。

肉料理 セルダニョー(仔羊尻肉)のロティとカボチャ、黒ゴマ

肉はアニョー*で、これもまた美味しい。
二年くらい前からインスタでストーカーしてましたが、Virtusのお肉、いつも断面がきれい。

*セルダニョー(Selle d’Agneau)という部位はお尻から腰のくびれあたりの場所です(鞍下肉ってみんな呼ぶけどわかりづらい…)

ワインはダイナミックな味のシラー。グラスから立ち上る香りはがっしりとしててプルーンみたいな濃さと、でも適度に酸味もあって重すぎず…

ソースはアニョーで取ったソース、黒ゴマがのったカボチャも、皮つきのカボチャを素揚げしたような一体感があって、ゴマの持つナッツのような雰囲気がアニョーとぴったり*。

*ドングリを食べさたイベリコ豚が美味しいことから、羊や豚、猪肉とナッツは組み合わせとして美味しいことが想像できます!

デザート シャンパーニュのソルベ、マスカルポーネとグレープルーツ

デザートも美味しかったです、一つ目のデザートが特にはじけるおいしさ!

シャンパーニュのソルベとマスカルポーネのムース、そしてピンクグレープフルーツ。
カリッとしたお砂糖のコインの上に軽くオレンジの皮がのせられてて、シャンパンとオレンジはミモザだっけ…

飴の厚みが絶妙で、これを崩すだけでも興奮した(笑)
多分わからないと思うんだけど、興奮するから試してほしい。

アメリがクレーム・ブリュレをコツっとやるときよりも、切なくて儚い厚みです。

このデザートはあと3つは食べられましたね!それくらいすっきりしてるけど味わい豊かで、ずっと楽しみたいけど30秒で完食しちゃったこの切なさはどうしたらよいのでしょう。

デザート ピスタチオ・エスプレッソ・ココナッツ・ライムの組み合わせ

二つ目のデザートはピスタチオとエスプレッソ・ココナッツとライム。
これがどんなデザートかを伝えるのは難しくて、写真の緑がピスタチオ要素
茶色がエスプレッソ・白いのがココナッツ・透明のジャムみたいのがライム。

料理ってどこから食べるかはお客さんが決めるから、口の中でどんな組み合わせができるかはお客さん次第。でも、そうやって生まれる偶然も素敵だよね、楽しいよね、美味しいよねってお皿でした。

なんだか幸せになれるデザート。

そういえば、神崎シェフがインタビューで「フランス人ではなくてなぜかアルゼンチン人と日本人で構成されていて*、でもフランスで料理を尊重しながら料理とワインを提案している。面白い、と勝手に私たちは思っています。」って話してたけど、まさにそんな感じのお皿だったな。

*Vitusは神崎シェフと旦那さんのMarcelo Di Giacomo(マルセロ・ディ・ジャコモ)さんの二人がシェフ。マルセロさんはMirazurでシェフ・パティシエを勤めていたアルゼンチン出身の料理人です。

お茶菓子 焼き立てマドレーヌ・アルゼンチンマカロン・パートフリュイ

コーヒーを頼んで出てきたお茶菓子も素敵。いま焼きあげたマドレーヌ、アルゼンチンマカロン、パート・ド・フリュイ。

マドレーヌはもちろん美味しいし、マカロンの素朴な生地も素敵。アルゼンチンマカロンというのがあるのか、アルゼンチン出身のマルセロシェフの考えるマカロンなのかは分かりません*…

*って考えると日本のモナカをMacaron Japonaisって名前で出しても流行りそうですよね。

パータフリュイは絶妙の弾力でコンニャク畑とプッチンプリンのまんなかくらいかな。パッションオレンジみたいな、酸味のきいた果汁が気持ちの良いゼリー。

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お会計 500ユーロぴったり

今日は若い2人の結婚祝いだったので、4人でフルに楽しんで500ユーロ。
(上からおまかせコース・グラス6杯のペアリング・炭酸水・カフェクレーム・カフェノワゼットです)

フランスに来て美味しいもの、って考えたらここもおすすめだなぁ。もっと忙しくなるし、値段も上げられると思うので次にパリ来たら絶対行きましょう。

オーナーのMarcelo Joulia(マルセロ・ジュリア)さんが建築家なので、空間の作り方も豊かです。空間のゆとりから感じる贅沢感をよくわかってらっしゃるのかも。(すみません、素人が偉そうに…)

Le Figaro
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Virtus ヴィルトュス パリ12区

火~土 12:00-14:00 19:00-22:00 日月休み
09 80 68 08 08
29 rue de Cotte75012 Paris 8番線 Ledru-Rollin駅 徒歩4分
Googleマップ ウェブ予約も可能

他のミシュラン日本人シェフを探すならパリ版フランス全土版をどうぞ。
デザート好きには同じく2019年に一つ星を獲得した杉山あゆみさんの「ACCENTS table Bourse」もおすすめです。

L’arcaneと甲乙つけがたいです…
料理オタクならラルカンヌへ、美味しいもの好きだとヴィルトュス。
ワインオタクならヴィルトュス、愛のあるサービスならラルカンヌ。
両方行きますか!(笑)